「かいちょうな話」 (新年号)
TEAM GREX会長
       藤沢 武  
 新年はやはりメデタイ話しがいい。日本では「富士と鯛」が揃えば、これはもうメデタサを絵に描いたようなもの。そこで登場するのが文句なしの大横綱・千代の富士だ。もの凄いコジツケみたいだが決してそんな事はない。今年の干支「酉」を考えれば、新しき年にふさわしいのはやはり「スモ〜トリ」!明けましておめでとうございます。躍進するTEAM GREX。日本一の高品質・GREXのウキを駆使して新記録の達成!新しき夢の実現に向け、今年も皆さん元気な磯ライフでありますように。
 角界一の「釣り名手」と云えばやはり千代の富士に尽きるだろう。「大将」と呼ばれた第58代横綱・千代の富士の九重親方。北海道松前郡福島町出身。「道南」と言われる北海道の南端。日本海・津軽海峡に面した漁業の町だ。本名・秋元 貢。家はイカ漁を中心にした漁師。貢少年の遊び場は当たり前のように海で、泳いだり、潜ったり、釣ったり、大自然の中で伸び伸びと逞しく育った。釣りは「いかに獲るか」の感覚。つまり漁に近い。大相撲界に入って小さい体ながら負けん気と根性で頭角を現していく。その頃の部屋頭は横綱の北の富士(現・NHK解説者)。千代の富士は付け人だ。ある年の夏巡業。会場が海の近くだった。横綱が冗談で言った「オイ、千代の富士!ちょっと潜って何かとってこい」横綱の言葉は絶対だ。まだ十代だった千代の富士はやや沖合まで泳ぎ一気に潜った。所がなかなか浮かんでこない。いつまで経っても潜ったままだ。みんながザワつき不安の空気が広がった。「オイ、大丈夫か・・」横綱も思わず声をだした時、ブファーと海面に飛び出してきた。驚異的な肺活量だ。パンツの中にサザエが幾つも入っていた。勿論、サザエは海に返されたが人間離れした潜水能力に皆、度肝をぬかれ横綱は二度と「千代の富士潜ってこい」とは言わなかった。36歳まで大相撲界を背負ってきた千代の富士の気分転換は釣りだ。なかでも九州場所での釣りは最高の楽しみにしていた。博多入りしてすぐ、懇意にしている船頭の船で玄界灘に乗り出し真鯛を釣る。船の上で立ったままバランスをとりながら漁場に向かった。素人はどこかに掴まっていないととても立っていられない。毎年、「船上のバランスの善し悪しで場所前の調子をみた」という。九州場所・福岡は女将さん(奥さん)の故郷だけに「みっともない所は見せられない」千代の富士は張り切った。昭和56年から63年まで実に九州場所8連覇!圧倒的な強さを見せつけた。そして場所が終わると玄界灘の真鯛釣りで九州場所を締めくくる。気分転換を実に上手にやっていたのだ。親方になっって数年後、釣り番組でこの玄界灘釣行を撮影した。あの「タイタニック」の有名シーンや漁船の舳先に捻りはちまきで立つ鳥羽一郎どころではない。玄界灘を行く揺れる船上でも平気で立っている。「生まれながらに船の上」のDNAは凄い。大揺れでも平気でおにぎりを美味しそうに食べ真鯛を狙う。撮影クルーはフラフラだ。長さ2m余の船竿で中型の真鯛を次々と掛けていく。凄腕だ。ときどき船長の大声がスピーカーから飛ぶ。「親方!そぎゃん、強かコッ、合わせんでんヨカ〜、もっとソフトにあわせんネ〜」つまりこういうことだ。竿先にコツッとアタリがあった瞬間に親方の竿先は跳ねあがっている。筋肉が驚異的な早さで反応してしまう。抜群の反射神経だ。海面を割って上がってきた真鯛の口が裂けて針先に皮一枚でぶら下がっている鯛もいる。考えるより勝手に筋肉が猛スピードで反応する為、エサをくわえた魚は悲劇だ。口が裂けるほど強烈な一発をかまされる。中には巻き上げる途中でバラす獲物もいる。口がちぎれたのだ。大横綱の集中力はケタはずれなのである。船のイケスは玄界灘の中型真鯛で一杯になってしまった。相撲は「相手のバランスを如何に崩すか」というスポーツだ。大将の信じられないバランスを目の当たりにすると「なるほど強かったわけだ・・」と思い知らされる。持って生まれた先天的なものと育った環境。いかなる困難をも乗り越える不屈の闘志と負けん気。「親方!さすがに釣りも横綱ですね〜」とモチアゲたら、その手には乗らない「家は漁師だよ」と軽くいなされた。「一芸に秀でた人は・・・」何でも凄い。ちなみに我が家では「不屈の闘志と負けん気」は女房が持っていて、釣りに行く「いかなる困難をも乗り越え」られない。やはり千代の富士は偉大だったのだ。今年こそブチカマシ・・・・タイ!



平成17年1月