「かいちょうな話」 (7月号)
TEAM GREX会長
       藤沢 武  

 釣り好きの旦那を持つ家は何かと大変だ。ご主人の趣味を理解する奥さんならば問題はないが、概ね「たまには家族の事も考えたらどうなの!」以下いろいろ「小言の一つや二つは毎回くらって」出掛ける。バックミラーの我が家が見えなくなると「よ〜し!出掛けちゃえばもうこっちのもんだ〜」と全然反省なんかしない。所が世の中にはいろんなタイプの家庭があるから面白い。「男のやることにイチイチ口出しするな!」一喝&亭主関白型。「この所、チョ〜忙しくてイライラストレス溜まってんだ。たまにはのんびりしたいよ〜」と繰り返し、釣行まで持ち込むタイプ。「友達の○○君の車が故障で明日の釣り困ってるらしいんだ。オイラ、別に行きたかぁ〜ないんだが、ここは見捨てられないよ」と友達をダシに、いかにもイヤイヤを装うタイプ。かねてからの手筈通り午前2時友達に電話させる。いち早く受話口で「なに〜ほんとか〜、よし、判った!すぐ行く!」何事が起きたか判らぬ奥さんは寝ぼけマナコ。この間、疾風怒濤の勢いで家を出る。すでに万全の準備をしている車はすっ飛んでいくという後の事は考えないイケイケタイプ。長期攻略計画実行型ともなると「いかに釣りが素晴らしいか」を焦らず折に触れ切々かつ得々と説く。「トイレの心配はいらないよ、こうすればいい。なっ?日焼け?大丈夫!UVカット99%のコレがある。危なくなんかないよ〜。いま女性釣り師増えてんだ。人生変わるよ〜」等々ひたすら素晴らしい映像を頭の中に描かせたあと、いまイサキが旬だ入れ食いだ。刺身いいよ〜、焼いてもいけるし、煮付けは身がホロッと取れて美味いよ〜と味覚にうったえる決定打を放つ。素人でも釣るのは簡単!・・と、その気にさせて夫婦してお揃いのライフジャケットに決めて「さぁ、これで堂々いつでも釣行OKだ」と安心するのはチト早い。女性は実に粘り強い。まず簡単に諦めない。基本に忠実、同じ事を丹念に繰り返すことなど全然いとわない。男が考える以上にタフな精神を持ち合わせているのだ。何度も釣行するうち魚を掛ける回数が旦那を上回ったりする。その都度、優しく針をはずしていた旦那はイラついてくる「も〜っ 俺の釣る時間がないよ〜」。やがて自分で一通り出来るようになると旦那に肩を並べてくる女性もいる。まだまだサマになってないね〜等と甘くみたらヤバイのだ。相手にはカメの強さがあるのだから決して夫婦で数を競ってはいけない。一番いい手は子供と釣行。「父親と釣りをした楽しい想い出を残してあげたいからね」これは効く。ただ落ちないか?転んでケガしないか?毒魚に触らないか?前に出すぎて波は大丈夫か?等々、もう気になって気になって釣りどころではなくなる。かくも釣り好きのお父さんは何かと辛いのだ。因みに我が家では、適当な間隔で釣行し馴染みとなったエサ屋の水道で完璧に洗いキレイにする。匂いを絶対に持ち込まない。処理した魚、二枚か三枚だけ持ち帰る。夫婦が食べる量があればよい。釣りの話より行き帰りの発見や出来事を楽しく話す。やがて週末が近づくと「土日は絶好の天気のようね。行けば〜?」等と嬉しい事をいう。でもこの頃不安だ。「ヒョットシテ コレハ ソダイゴミ アツカイ チャウヤロカ?」

平成16年7月

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